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株式会社サンシバ複層
ベテランプロダクトデザイナーと共に追求した、とっておきの「窓ガラス」
今回フォーカスするのは、建造物には欠かせない「窓ガラス」。防犯用や断熱用といった機能的なものから、インテリアとしてデザイン性に特化したものまで、ラインナップは多岐にわたります。
人々のライフスタイルに応じて変化し続ける「窓ガラス」の役割について、Gマーク及び部門賞、日用品優秀製品コンクール通産大臣賞、その他数多くの受賞歴があるプロダクトデザイナー中島敏さん、ガラスづくりのプロフェッショナル大久保良一さんを迎えてお話を伺いました。
\ 今回の対談メンバーはこちらの皆さん /
- 左:株式会社サンシバ複層/代表取締役 大久保良一さん
- 右:有限会社ジーマデザイン/代表取締役 中島敏さん
安心安全な暮らしを支える「窓ガラス」ができるまで
−まずは、おふたりの仕事について教えてください。
中島: ジーマデザイン(ZIMADESIGN)という会社を経営しています。スポーツメーカーや生活用品メーカーのプロダクトデザイン経験を経て、現在の事務所を立ち上げました。製品開発に関する知見は、過去に勤めていたアイリスオーヤマ時代に培われました。
あとは、東北工業大学ライフデザイン学部で8年間教授をしており、その際に研究していた“安心安全のためのスマートデザイン”は、現在の仕事にも通じる重要なテーマです。
日常生活のニーズを満たすだけではなくて、誰にも起こりうるリスクに備えることをあらかじめ織り込んだデザインを「スマートデザイン」と呼びます。これは、東日本大震災後に日経デザインが提唱した考え方です。実際に私も「人々がいかに安心安全に暮らせるか」という視点で、企業の開発サポートを行っています。
大久保:株式会社サンシバ複層は、創業から40年、複層ガラスの研究・開発・製造を通して、お客様の笑顔が見えるものづくりを追求してきました。
「複層ガラス」とは、2枚以上の板ガラスを重ねて、ガラスとガラスの間にできた隙間に乾燥空気や質量が重いガスを封入したガラスのことです。間にできる隙間がクッションとなり、室温対策や結露防止、遮音効果などが得られるのが特徴です。複層ガラスを用いた建物だと、夏は涼しく・冬は暖かく過ごすことができるので、省エネ効果も期待できます。
また、当社の理念は「人と地球が笑顔に」です。小さい会社ながらも、ガラスの力で皆さんを幸せにできるよう頑張っています。
−開発を共にしたきっかけは?
大久保:従来の製品も十分な性能を持ち合わせているのですが、「もっとできるはず」という想いがありました。とはいえ、私たちのような小さな会社にとって、新たなデザインを創造したり、革新的な技術を導入したりすることは、時間と資金面で非常に大きな壁があります。アイデアをカタチにするまでのプロセスも自力では限界があったので、実践的なアドバイスを頂ける人を探していました。
そこで、えんたぐるチームの友人に相談したところ、中島さんをご紹介いただきました。お話を伺うなかで、中島さんの”製品が仕上がるまで寄り添う姿勢”に惹かれました。数多くのヒット商品を生み出してきた経験値の裏には、”一気通貫したモノづくり精神”があると知り、「この人と一緒につくりたい!」と思いました。
中島:私は窓ガラスについてはまったくの素人でしたが、大久保社長とのやり取りを通じて、必要不可欠な生活アイテムだと再認識しました。
そして何よりも、大久保社長の情熱に胸を打たれました。打ち合わせの度に、予想を超える数と種類のアイデアを持参してくださるので、”本気で向き合いたい”と思いました。豊富なアイデアの裏には確かな技術もあったので、人の役に立つモノづくりが始まる予感もしました。機能やデザインのみならず、権利や安全面も徹底的にサポートしよう!と気合いが入りました。
−実際に開発した製品はどんなものですか?
大久保:既存ビルに設置可能な、断熱・遮断効果を高める窓ガラス『エミネントペアW』を開発しました。この商品は、アタッチメント付ペアガラスを専用留め具で固定する仕組みで、取り付けが容易な上、工事期間が短く、時期も選びません。つまり、工事費の大幅な削減と光熱費のランニングコストダウンを叶える画期的な窓ガラスです。
『エミネントペアW』http://www.sanshiba.jp/eminent/
大久保:オフィスビルやテナントビル、ビジネスホテル、病院など、あらゆるビル窓に対応します。すでにある窓に対して、室内側から『エミネントペアW』を後付けするだけで、光熱費を約30%〜50%も削減することができます。
外部足場が不要なので工事費用のコストダウンも叶いますし、工事現場での事故防止にもつながります。また、既存サッシやガラスの撤去をする必要もないので、産業廃棄物も発生しません。低コストで建物の資産価値を上げてくれる、環境にも人にも優しい窓ガラスです。
中島:『エミネントペアW』の開発ポイントは、「どんな窓にも取り付け可能なアタッチメント構造」です。アタッチメント付ペアガラスを専用留め具で固定するためには、窓の形状に違いがあっても開閉を妨げないデザインであることが求められました。
サッシの構造調査、素材選定、コスト比較など、あらゆる試行錯誤を重ねた結果、独自性と機能性に優れた理想の新製品を開発することができました。”技術評価書 評価「6」認証”など、特許庁の評価に値する評価を頂くこともできました。
実用新案登録 登録第3208073号 技術評価書 評価「6」認証*
−『エミネントペアW』に次ぐ新製品も開発されたとお聞きしました。どういった製品なのでしょうか?
大久保:『エミネントペアW』の開発経験をもとに作られたのが、貫通・破壊しにくい窓『エミネントペアセーフサイド』です。
『エミネントペアセーフサイド』http://www.sanshiba.jp/safeside/
特許第6770723号取得
大久保:近年、台風や竜巻などの自然災害が大型化していることから、飛来物でのガラス貫通破損が生じる可能性が高く、その対策を講じる必要性も高まってきました。また、空き巣被害の約70%は、ガラス破りが手口と言われています。こういった日常生活における防災防犯対策の一助となるのが、耐貫通ペアガラス『エミネントペアセーフサイド』です。
最大の特徴は、複層ガラスの一種である「ペアガラス」の空気層に、透明樹脂板を挿入していること。ガラスとガラスの間に新たに樹脂板を挿入することで、一般的な窓ガラスよりも衝撃に耐えられる強さを手に入れました。これらの特性が評価され、特許を取得することもできました。
中島:『エミネントペアセーフサイド』に関しては、CG画像の制作者として携わりました。第一弾の『エミネントペアW』で得た知見が存分に活かされていて、大久保社長の自信を感じました。
大久保:衝撃に強く、断熱性に優れているので、ホテルや店舗、公的避難場所、学校など、長時間冷暖房エネルギーを使う施設への設置がおすすめです。
また、個人での購入も可能なので、一般住宅の新築やリフォームを検討されている方にも最適です。通風や採光など、住み心地を大きく左右する「窓ガラス」こそ、住まいを整えるうえで見直すべきポイントの1つです。理想の間取りやデザインを崩すことなく、低コストで安心安全な住まいへと導いてくれる『エミネントペアセーフサイド』を、是非ともひとりでも多くの方に知っていただきたいです。
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社会問題を鋭く観察する開発者の視点、実際の使い心地を具現化するプロダクトデザイナーの視点、両視点の融合によって生み出された「窓ガラス」は、まさにスマートデザインそのもの。人々のライフスタイルを明確に捉えるプロの力によって、今日も安心安全な暮らしがつくられています。これからのスタンダードとして、価値ある「窓ガラス」は欠かせない存在です。